朽木家伝来『美濃国兼吉』保存刀剣鑑定書　室町時代前期のうぶ茎在銘太刀 四つ目紋家紋金具刀拵　朽木元綱金ヶ崎撤退戦の佩刀

美濃兼吉は室町時代初期の応永頃の刀工で美濃善定派の祖として
知られています。善定は彼の法名です。手掻包吉の子、あるいは
直江兼友の孫とも言われています。作風から推測するに現在は本国
大和説が有力となっているようです。作風は応永という時代を反映した
上品な姿をしています。これ以後美濃鍛治は大きく繁栄していくことになります。
この刀は鎬造、庵棟、身幅尋常、重ねやや厚く、反り高くつき、切先は中切先と
なっています。室町時代初期応永の頃らしい優美な太刀姿をしていると思います。
鍛えは板目肌に流れ肌や柾ごころが交じり、地沸がよくついて、地景入り、
白気映りが現れる美濃物らしい鍛えとなっていると思います。刃文は直刃を
焼き上げて、匂勝ちに小沸が細かに砂流しかかり、匂口が締まりごころとなっています。
帽子は直ぐに入って先が掃きかけて小丸となって返っています。
茎は貴重なうぶ茎で二字銘で兼吉の銘があります。保存刀剣鑑定書付きです。
元亀元年1570年に織田信長と朝倉義景との戦いが行われますが、信長の義弟であった
浅井長政の裏切りによって挟撃される形となり信長は危機に陥ります。京への撤退は
困難を極めますが朽木谷を治めていた朽木元綱の協力によって近江から無事に京へ辿り着きます。
この際に朽木元綱が佩刀していたという太刀になります。信長麾下となり、のちに秀吉、
家康に仕えており江戸時代も徳川家から信任を得て福知山藩藩主などとして存続しています。
記録係の物と思われる古鞘書には金ヶ崎撤退戦の時に使用した事が書かれています。
拵は黒塗鞘で腰元に印籠刻が入っています。縁は赤銅魚子地に四つ目紋、頭は秋草図、
目貫は龍図です。鍔は鉄地で唐人図となっています。時代のある古い拵となっています。
四つ目の家紋は近江中心に栄えた名門佐々木氏の代表紋であり、朽木家も佐々木氏の流れを
組む一族と言われています。まさに戦国時代、日本史の分岐点の証人とも言える
一振りでまさに歴史的名刀であると思います。

長さ/68.7cm　反り/2.4cm
元幅/27.6mm 元重/6.8mm 先幅/18.0mm 先重/4.8mm 刀身のみの重量545g
計測数値の誤差はご容赦下さい。

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